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『光州5・18』 [韓国映画]

1330_img_1.jpg2007年キム・ジフン監督作品、 原題では「華麗なる休暇」と、一瞬「何のこっちゃ?」と意味不明だったのですが、 邦題ではそのものズバリの光州5・18を観ました。 この映画は韓国では1993年の金泳三(キム・ヨンサム)が 文民大統領として誕生するまでは、たとえお茶の間でも 決して語ることができなかった傷ましい事件である光州事件を背景に描き、 歴代韓国映画興行収入第8位だったそうです。

ただ、光州事件といってもご存じない方が大半かと思います。
いえね、日本人の我々が知らないのは当たり前で・・・
だって、当の韓国でも韓国現代史は選択科目だそうで、
学校でもあまり教わらず、現役大学生でも知らない人が多いって言うんですもの~
それにこの映画においても、キム・ジフン監督はあえて商業映画として、 映画が重くならないようにとその点を軽減したそうです。
でもね、韓国ではそれで良くても日本ではどうなんでしょう。
やはり何らかの説明はあった方がいいと思ったのですが・・・
そういう訳で、映画のお話の前にちょっとだけお節介を・・・

韓国7大都市のひとつで、韓半島の1番南に位置する全羅南道にある光州市で、
1980年5月韓国軍と民主化を求める学生や一般市民との間に武力衝突が起き、
3000人以上もの死傷者が出た大惨事がありました。
それを光州事件といいます。
そして、そもそもどうしてそんな衝突が起ったかというと・・・

毎年、8月15日は日本では終戦記念日です。
でも韓国では光復節といい、日本の植民地支配から解放された記念日なのです。
ただ、いくら日本から解放されても韓国国民にとっては真の民主化とは言えませんでした。
というのは、1961年にクーデターを起こした朴正煕(パク・チョンヒ)将軍が
63年に大統領となってから、その後32年もの間、
政治の実権を握っていたのは軍出身者だったからです。
確かにその間、経済発展はありましたが、
彼らはまるで今のミャンマーのように、ことごとく民主化運動を弾圧したのです。
しかし、大学生達の反政府運動が盛んになり、
1980年当時、軍事クーデターを起こし軍の実権を握った後の大統領、
全斗煥(チョン・ドゥファン)は何も関係ない一般市民をも巻き添えにし、
総勢2万人以上の大韓民国国軍によって武力弾圧したのです。
当時、その事件の真相を知らされなかった国民はその犠牲者たちを暴徒と呼び、
冷たい目で見る人も多かったそうです。
でも今は、光州事件が「光州民主化運動」と改められ、
暴徒が「烈士」と呼ばれるようになり、犠牲者達が眠る5,18墓地もでき、
5月18日は国家記念日となったのです・・・

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映画の冒頭は5月の鮮やかな緑が映し出され、とても綺麗でした。
そしてその中を、タクシー運転手のミヌがゆったりとのんびりと運転しています。
でもその平和その物の光景が一瞬で、迷彩服に身を包んだ空軍の出動シーンへと変わります。
もう、この落差が大きくて、このシーンを見ただけで映画の最後を察することができました。

高校生の弟との二人っきりの家族で、その弟ジヌに愛情をそそぎ、
看護師のシネにうぶな少年のように想いを寄せている心優しいタクシー運転手のミヌ
そんな平凡な生活に不満も無く暮らしていたのに、ある日突然、街に兵士がやって来たのです。
そして、民主化を叫ぶ学生達だけでなく、何も知らない市民までもに危害を加えたのです。
そんな時、級友をその犠牲で亡くした弟のジヌもデモに参加し、銃弾に倒れ・・・
最愛の弟を目の前で亡くしたミヌは自らも銃を持ち、
残った愛する人を守るために闘う決意をするのです・・・

無題.JPG

主な出演はミヌにキム・サンギョン
たくさんのドラマや映画に出演していますが、
日本ではソン・ガンホと共演した「殺人の追憶」が1番有名でしょうか?
わたしは、いつも男っぽさを前面に押し出しているように感じていたのですが、
ここでは前半はシネに対しても奥手の心優しい男を演じていてちょっと印象が違いました。
そして優等生の弟ジヌには「王の男」で人気者となったイ・ジュンギ
高校の黒い制帽を被った姿が彼の特徴である涼しげな目元をますます際立ててるようでした。
また、ミヌが想いを寄せる看護師のシネにはイ・ヨウォン
ラストに結婚式のシーンがあるのですが、亡くなった者たちは皆明るい笑顔なのに、
花嫁の彼女だけが死人のように無表情でとても印象に残ったラストでした。
ところで、彼女は映画よりドラマ出演が多く、韓ドラをご覧になる方にはお馴染みかも?
ちなみに役柄は清純な娘役が多いのですが、実際には5歳のお嬢ちゃんのママさんです。
そしてシネの父であり、退役軍人で今はミヌが勤めるタクシー会社の社長である
パク・フンスに韓国の国民的俳優アン・ソンギ
たくさんの作品に出演し、さぞ忙しいだろうと思うのですが、
さすがというか、人望のある人物を好演しています。
ただ、フンスの退役理由がわかればもっと面白かったかも?とも思いました・・・
その他、出番は少なかったのですが帰って来ない息子を待ち続ける盲目の母役で
わたしの好きな女優のナ・ムニが出演していました。
ムニさん見てると本当のお母さんみたいで好きなんですよね~

cap0511.JPG

観終えてわたしはふと同じ兄弟愛の「ブラザーフッド」を思い出しました。
こういう家族愛を描かせたらとても上手いのが韓国映画です。
そして、実際に起きた事件を背景にしているところに真実味を感じます。
それと、監督の考え通り、政治色が強くないのも観やすいかとも思います。
でもそれは、ある程度の知識がないと理解しにくいとも思いました。
ただ、いかに残酷で悲惨な出来事だったかは誰もが納得するでしょうが・・・

なお、原題の「華麗なる休暇」とは鎮圧軍の作戦名だそうです・・・

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あしあと 4

コメント 11

雀翁

とてもためになりました。
ソウルに住んでいながら、光州事件のことは、その名前を聞いたことがあり程度でした。こちらで、何か歴史の話をすると、どこでどう日本の占領時代そして豊臣秀吉まだ話がいくかも知れないので、怖くてなかなか聞けません。
by 雀翁 (2008-05-14 20:34) 

collet

あっ、その、いや・・・
韓国へ1度も行ったことがないわたしが偉そうに語ってしまい、
お恥ずかしいです(>_<)
ただ、韓国映画が好きでいろんなのを観る様になり、
自分が生きてきた時代と同じ時代の韓国に興味を持ちました。
とにかく、近くて遠いお国だったもので~
それで、自分ながらにチョコッとお勉強したのですが・・・(~_~;)
確かに、昔とは変わったとは思いますが、 雀翁さんのご心配にも頷けます。
まだ、そのテのお話は避けた方がいいかもですね。
by collet (2008-05-15 12:04) 

虹子

colletさん、良い(という表現がいいのかわからないけれど)映画の
紹介、ありがとうございます。
俳優さんも実力派だし、観てみたいと思いました。
韓国ドラマ、映画を見るようになって
植民地時代やその後の弾圧の時代のことを
改めて知ることも多いのですが、
今回こうして説明して頂いて、とてもよくわかりました。
遠いけど近い国のこと、もっと知らなければいけないですね。

・・・軽い話になりますが
イ・ヨォンはともさかりえに似てますよね。


by 虹子 (2008-05-15 20:30) 

降龍十八掌

チョンドファン、というより、ゼントカン大統領。なつかしいですね。
光州事件、そういえば、ありましたね。

韓国の場合は、大統領が交代するたびに前の人を逮捕したり、本当に戦国時代の権力闘争みたいですよね。
by 降龍十八掌 (2008-05-15 21:45) 

collet

★虹子さんへ
それまで洋画オンリーだったわたしが
韓国映画に初めて出会ったのは2000年に観た「シュリ」からなんです。
まだ、日本にはあまり入っていませんでしたが、観られる物は何でも観ました。
とにかく、あの当時の韓国映画界には力がみなぎってるようで、とても魅力的でした。
それでふと、その急に魅力を増した理由が知りたくなったんです。
きっと、真の民主化になり、
それまで抑えられていた映画人たちの思いが一気に噴出したのでしょうね。

ヨウォンちゃん、似てます!ともさかりえに!!
わたしも思ってました~痩せてるとこも口元も!
虹子さんなら彼女の出演ドラマはたくさんご覧なのでは?
わたしは復帰第1作の「ファッション70’」だけしか観てないのですが~(~_~;)


★降龍十八掌さんへ
そうですね~我々にはゼントカンの方が馴染みがありますよね~
確かに軍の中でも権力争いが頻繁にあったようで、
この映画に登場するパク・フンスもそれが退役理由ではないかと
勝手に想像してるのですが・・・(~_~;)
by collet (2008-05-16 14:54) 

婿ペンギン

光州は出張で立ち寄ったことがあります!!
韓国の人は皆エネルギッシュでした♪
by 婿ペンギン (2008-05-16 20:17) 

collet

あら~、光州へ行かれたんですね!
それで久留米とどちらが都会でしたか~(~_~;)
韓国の方のエネルギッシュさはどこからのものでしょう?
やはり、キムチパワーかな・・・(・・?
by collet (2008-05-17 16:34) 

たいちさん

私も試写会で観ました。そんな昔の事でないのに、良く知らなかった事件で衝撃を受けましたね。
by たいちさん (2008-05-18 11:32) 

collet

そうですね、韓国にはまだまだ明るみにされてない事件が多そうです。
そういう点から、これからも映画の題材にされる事も多いかと思います。
ノンフィクション好きなわたしとしては、
気の毒なようで楽しみなようで、複雑な思いです・・・(ーー;)
by collet (2008-05-18 13:41) 

がり

おじゃまします。
私が見ていない映画をたくさんご覧になってますね。
正直、軽めの話が好きな私ですが、
でも隣国の事を知りたいので、いつかきっと見てみたいです。
もっとも自国の事も知らないので、そっちが先?(笑)
by がり (2008-06-12 14:42) 

collet

がりさん、ごめんなさい!!(__)!!
せっかくコメントをいただきながら、
2年以上も気付かずで~~本当にどうもすみません!!(__)!!
と、取り敢えずは謝罪を~~(__)
by collet (2010-08-01 14:50) 

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