毎日新聞「おくりびと」アカデミー賞受賞の背景を読んで [日本映画]
先日、毎日新聞でこのようなタイトルの記事を見つけました。
「この映画がなぜこんなに外国で高い評価を得たのかを考えてみましょう」
との編集部の言葉が添えられていましたが、
わたしも昨夏のモントリオール世界映画祭でのグランプリ獲得時より、
不思議に思っていたことなので、大変興味深く読みました。
「この映画がなぜこんなに外国で高い評価を得たのかを考えてみましょう」
との編集部の言葉が添えられていましたが、
わたしも昨夏のモントリオール世界映画祭でのグランプリ獲得時より、
不思議に思っていたことなので、大変興味深く読みました。
この記事では同志社大学教授で国際関係論専門の村田晃嗣先生と、映画評論家の寺脇研さん、
そしてアカデミー会員でもある映画プロデューサーのマーシャ・ナサティアの
3人の意見が紹介されておりました。
そしてアカデミー会員でもある映画プロデューサーのマーシャ・ナサティアの
3人の意見が紹介されておりました。
その中で、わたしが1番興味を持ったのは、やはり当人であるマーシャ・ナサティアの記事です。
今年で83歳になる彼女は、女性初のユナイテッド・アーティスツ副社長となり、
「カッコーの巣の上で」や「ロッキー」の製作にかかわった方だそうで、
その彼女が考える、「おくりびと」が外国語映画賞に輝いた理由を語っていたのです。
今年で83歳になる彼女は、女性初のユナイテッド・アーティスツ副社長となり、
「カッコーの巣の上で」や「ロッキー」の製作にかかわった方だそうで、
その彼女が考える、「おくりびと」が外国語映画賞に輝いた理由を語っていたのです。
ところで、その理由の前に彼女の観賞後の感想はどうだったかというと・・・
「おくりびと」は家族関係をテーマにハッピーエンドで終わる物語で、
どこか馴染みのある古いハリウッド映画のようだったとありました。
それで、いつもありきたりでない物を探している米国の映画関係者が、
この映画を選んだ事に驚いたのだそうです。
「おくりびと」は家族関係をテーマにハッピーエンドで終わる物語で、
どこか馴染みのある古いハリウッド映画のようだったとありました。
それで、いつもありきたりでない物を探している米国の映画関係者が、
この映画を選んだ事に驚いたのだそうです。
じつは、わたしは子供の頃から映画が大好きで、洋画を観て大きくなりました。
それがいつの頃からか、パッタリと洋画への興味が薄れたのです。
ちょうど、ヒーロー達が活躍するストーリーが、持て囃されるようになった頃でしょうか?
そんな時、韓国映画に出会い、アジア映画中心に観るようになったのです。
ですから、彼女が言うところの昔のハリウッド映画は今でも好きなんですよね・・・
それがいつの頃からか、パッタリと洋画への興味が薄れたのです。
ちょうど、ヒーロー達が活躍するストーリーが、持て囃されるようになった頃でしょうか?
そんな時、韓国映画に出会い、アジア映画中心に観るようになったのです。
ですから、彼女が言うところの昔のハリウッド映画は今でも好きなんですよね・・・
そして、理由として先ずあげられたのは、
投票者の年齢が関係しているかもしれないとの点です。
それはどういう事かというと、当たり前ですが外国語映画賞に投票する場合、
アカデミー会員向けの上映会場へわざわざ出向き、
ノミネートされた5本の映画をすべて観なければいけません。
ですから、投票者は時間にゆとりのある、
すでに映画人としても成功し、ある程度の年齢に達した人達だというのです。
そしてそんな人達は、自分自身の人生の終わりを
死を扱った「おくりびと」に重ねて見たのではないかと・・・
投票者の年齢が関係しているかもしれないとの点です。
それはどういう事かというと、当たり前ですが外国語映画賞に投票する場合、
アカデミー会員向けの上映会場へわざわざ出向き、
ノミネートされた5本の映画をすべて観なければいけません。
ですから、投票者は時間にゆとりのある、
すでに映画人としても成功し、ある程度の年齢に達した人達だというのです。
そしてそんな人達は、自分自身の人生の終わりを
死を扱った「おくりびと」に重ねて見たのではないかと・・・
わたしはアカデミー賞の投票方法などはまったく知らないもので、
アカデミー会員なら全員が見て投票するのかと思っていました。
でも、どうやらそうではなさそうですね?
ですからこれに関しては、とても意外に思いましたが、もしそうなら、
見た方たちは確かに身近に感じ、素直に映画に入り込めたのかもしれませんね。
アカデミー会員なら全員が見て投票するのかと思っていました。
でも、どうやらそうではなさそうですね?
ですからこれに関しては、とても意外に思いましたが、もしそうなら、
見た方たちは確かに身近に感じ、素直に映画に入り込めたのかもしれませんね。
そして次に、納棺師の仕事を遺体の身支度という異文化の儀式と捉え、
遺体に敬意を払うような所作に美しさを感じ、魅了されたとありました。
遺体に敬意を払うような所作に美しさを感じ、魅了されたとありました。
この点においては、日本人であるわたし達も同じですよね。
現にわたしなども、納棺師という言葉は知っていましたが、あんな作法を見たのは初めてです。
ですから、本木くんの猛特訓をして身に付けたという、
流れるような所作を本当に美しいと思いながら見たのです・・・
現にわたしなども、納棺師という言葉は知っていましたが、あんな作法を見たのは初めてです。
ですから、本木くんの猛特訓をして身に付けたという、
流れるような所作を本当に美しいと思いながら見たのです・・・
それから彼女は、アメリカでは死んだ人と生きている人とのつながりが薄いと語っていました。
アメリカでは自宅で亡くなることは滅多になく、大体が病院で亡くなり、
死後、すぐに防腐処置業者へ運ばれ、化粧と着替えを済ませ棺に入って戻ってくるそうです。
ですから、親が死んでも遺体が洗われるのを見ることもなく、
大半がどうなっているのかを知ろうとも思わず、
葬儀会場でも棺が閉じられたままということも間々あるそうです。
それに引き換え、映画「おくりびと」の中では、
火葬前に遺体を整え納棺するまでを家族の前でしています。
ましてや死者の人生を祝福し、愛と尊敬の念をもちながら・・・
アメリカでは自宅で亡くなることは滅多になく、大体が病院で亡くなり、
死後、すぐに防腐処置業者へ運ばれ、化粧と着替えを済ませ棺に入って戻ってくるそうです。
ですから、親が死んでも遺体が洗われるのを見ることもなく、
大半がどうなっているのかを知ろうとも思わず、
葬儀会場でも棺が閉じられたままということも間々あるそうです。
それに引き換え、映画「おくりびと」の中では、
火葬前に遺体を整え納棺するまでを家族の前でしています。
ましてや死者の人生を祝福し、愛と尊敬の念をもちながら・・・
また、これはとてもアメリカらしい点ですが、
イラク戦争開戦後、戦死した兵士の棺の報道がブッシュ大統領によって規制された事もあり、
アカデミー会員はそんな政治のありようも意識したのではないか?ともありました。
イラク戦争開戦後、戦死した兵士の棺の報道がブッシュ大統領によって規制された事もあり、
アカデミー会員はそんな政治のありようも意識したのではないか?ともありました。
最後に彼女が受賞理由を明白に答えています。
外国語映画賞の最終候補に残った素晴らしい5作品の中で、
最も家族のことを考えさせてくれ、最も観客の心を安らげてくれる作品だった
外国語映画賞の最終候補に残った素晴らしい5作品の中で、
最も家族のことを考えさせてくれ、最も観客の心を安らげてくれる作品だった
どうやら、この映画はそんなアメリカ人が長く忘れていた家族愛を思い出させたようです。
でも、こうやって受賞理由を聞いていると、
わたし達日本人も同じような思いを抱いたのではないでしょうか?
現に、このわたしも映画を観終えて思ったのは、
亡き父の思い出と、今はまだ元気な母のこれからでしたもの・・・
いくら言葉や文化の違う国とはいえ、人間の持つ感情はみな同じなんだと、
今回の「おくりびと」の外国語映画賞受賞によって、
今更ながらに気付かされたようでした・・・
でも、こうやって受賞理由を聞いていると、
わたし達日本人も同じような思いを抱いたのではないでしょうか?
現に、このわたしも映画を観終えて思ったのは、
亡き父の思い出と、今はまだ元気な母のこれからでしたもの・・・
いくら言葉や文化の違う国とはいえ、人間の持つ感情はみな同じなんだと、
今回の「おくりびと」の外国語映画賞受賞によって、
今更ながらに気付かされたようでした・・・
ふーん、そうだったんですか。
外国語映画賞というんですか、おくりびとがそれを受賞後、日本でも特別に上映されていたようですね。
自分は、いつかTVで放送されるのを待ってみたいと思います(^^ゞ。
映画のこと、NHKのドラマのこと、いろいろ勉強になりますよー(^-^)。
by dolfin (2009-03-18 08:08)
★わかさん、ポチッとありがとうございます~~^^;
★dolfinさんへ
まだ上映してますよ~~
で、今日がDVDの発売日なので、その内必ずTVでありますよ!
その時にはぜひ、どうぞ~~\(~o~)/
by collet (2009-03-18 12:54)
「おくりびと」に関しては、それが賞を受賞したということしか知りませんでした。選考のプロセス、また、選考委員の方の価値観など、よても興味深く読ませいただきました。
異体の整えは、葬儀屋さんが片手間にやるのかと思っていましたが、そうではないのですね。
>死者の人生を祝福し、愛と尊敬の念をもちながら
なんだか、心が目覚めさせられたような気がします。
「私が死んだら、葬式はせず、さっと焼いて散骨して欲しい」、と常々家族に言っており、その気持ちは変わりません。
でも、わたしのや家内の両親にその時が来たら、この言葉をしっかり思い出したいと思いました。ありがとうございました。
by 雀翁 (2009-03-18 13:10)
「国、人種が違えども、人間の感情は、どこも同じ」に、同感ですね。
by たいちさん (2009-03-18 13:26)
★雀翁さんへ
わたしもずっと不思議に思い知りたかったことで、
この新聞記事を見つけたときは嬉しかったです。
それから、この映画の舞台は山形の庄内地方なのですが、
うちの父のときは、こんな儀式のようなのはなく葬儀社の方がしてくれました。
でもちゃんと、家族の前で大事に扱ってくれました。
きっと、地方によって葬儀の仕方が違うようにそれも違うのかもですね。
>さっと焼いて散骨して欲しい
あの~、ちょいとご参考までに・・・^^;
「さっと焼いて」とおっしゃいますが、焼くのはさっとでも、
個人で遺体を火葬場に運ぶのは面倒なようですよ。
それに葬式をしなければ、個人でお焼香に来られるし・・・
じつはね、これがね、残された者には案外、面倒なんですよね~(ーー;)
ですから、一概に葬式は無しとも言えないよねと、我が家では話しております。
★たいちさんへ
そうですよね!
こんな当たり前なことですが、今回の受賞理由を知り、
何だかホッとしたような幸せな気分になりました。
出来るなら、この世のすべての人が同じ思いになってほしいですね。
★kinkonさん、ポチッとありがとうございます~~^^;
by collet (2009-03-18 16:11)
colletさん、大変興味深く読ませていただきました。
自分の好きな分野と言うか題材を前にしたとき、それをどのように料理して文章にまとめるか、そして何を訴えるか・・・社会人1年生の時の上司(係長)に、まるまる3年間これでもかと言うぐらいにしごかれました。
だから、人の書く文章については、よく読んで自分なりの感想と言うかそういうものをなるべく持とうとしてきました。
大変分かりやすい文章でした。外国人が極めて日本的な職業や風習・文化をどのように理解していたのか、よく分かりました。
1編の作品をそこまで深く掘り下げて見ていることに、当たり前かもしれませんが、プロの目を感じました。
私は先日久しぶりに「大統領の理髪師」を観ました。ソン・ガンホとムン・ソリの夫婦と韓国の軍事政権下の厳しい統制、1960年の「4.19学生革命」によって辞任した李 承晩政権、でも1年後に軍部によるクーデターで政権を奪取した朴 正ヒ(漢字が見つかりませんでした)・・・銃弾に倒れるまで17年間にわたる長期に厳しい統制を敷いていた韓国、その時の民衆の苦しみをコミカルに時にシリアスに描いていた「秀作」だと思います。
やはり良い作品は、観終わった後にこころに永く余韻が残りますね。
by sarahe (2009-03-18 20:20)
私は父の葬儀のときの、葬儀社の方の技術の高さに驚きました。普通の営業・交渉・運転を対応するお兄さんが、遺体を他の人には見えないように上手に洗ってくれ、その場で綿(わた)から美しい死に装束&綿のワラジを10分ほどで作り上げ、何から何まで仕切ってくれるのには、尊敬の念を抱きました。不器用な私には無理だなあと思いました。
ただ、お葬式だけに、親族の方とトラブルも結構あるようですが・・・
「おくりびと」の監督の過去の作品を調べたときに、大変びっくりしました・・・アダルト系から転向されたのですね。
by Bonheur (2009-03-18 20:37)
投票者の年齢と関係があるとは
興味ふかいお話ですね。
それにしても、日本では家族が
納棺にかかわることは(地方で仕方が違うとはいえ)
わりと普通なのに、アメリカでは棺に入れられるまで
かかわらないことをはじめて知りました。
死を通して家族のありよう、死者への愛を
感じるこの映画が評価された理由が
改めて分かったように思います。
ますます、DVD見なくちゃ!
by hirohiro (2009-03-19 00:50)
なるほど、参考になりました。
個別に家に来られても、残されたものには負担になりますね。
もう少し、詳しく作戦を練らないといけないようです。
コンセプトは、簡素、低負担、速やかな忘却ですが、それは簡単ではないのですね。
by 雀翁 (2009-03-19 09:14)
★saraheさんへ
こんなのでお分かりいただけたようで、よかったです~^^;
わたしにとっては、この映画が話題になった頃より、
ずっと心の中にあった疑問だったもので、この記事を見つけた時は嬉しかったです。
それで、他にも興味がおありの方がいらっしゃるかも?と記事にしました。
このマーサの他にも韓国映画界との関わりも深い寺脇研さんの文もあり、
最近の日本映画はスケールこそは小さいが、
ハリウッドにはない良さがあると書かれていました。わたしも全く同感です!
最近の邦画は本当に面白いのが沢山ありますもの~(*^^)v
「大統領の理髪師」はイイ映画でしたね。
わたしはノンフィクションが好きなので、歴史を絡ませた物語は好きなんです。
ただ、ソン・ガンホは苦手です~あっ、これは単なる好みの問題で~(~_~;)
★Bonheurさんへ
Bonheurさんが経験なさったのはわたしと同じようなのです。
葬儀社に頼んだ場合は、そんなのが一般的なのかもですね・・・
この映画のような納棺師としての所作はなくとも、
家族としては、それで充分だと思いました。
だって、本当によくしてくださったもの・・・
滝田監督にも新人の頃があり、仕事を選んでられなかったのかもね?
ただ、そんな時代があり、今があるのでしょう・・・でもわたしも驚いた!
その意味、きっと郷里のご両親は今回の受賞をお喜びだったでしょうね~^^;
by collet (2009-03-19 15:01)
★hirohiroさんへ
わたしもこの記事で初めてアメリカでの納棺の仕方を知りました。
それにしても、病院から業者へ直接送られるのはチト寂しいですね。
日本なら、1度家に帰すことを大事にしますが・・・
やはり、死に対しての受け取り方の違いでしょうね。
何はともあれ、昨日、DVDは発売されましたので、
TVでもあるでしょうが、レンタル店にもじきに並ぶと思います。
ぜひ、どうぞ~~\(~o~)/
★雀翁さんへ
今は葬儀に関しても人それぞれにいろんな考え方があります。
そして、葬儀社の方もそんなニーズに応えるため色々あるようです。
ですから、雀翁さんのコンセプトにより近い物もあるかもですよ!
まあ、まだまだ先のお話でしょうけどね~(~o~)
by collet (2009-03-19 15:40)
そうでしたね~ガンホさん苦手でしたね^^;
それとムン・ソリさんですが、先日レンタルビデオで「女教授」というものを借りてきたんです。ムン・ソリさんが主演なんですが、なかなか過激な描写があって、あれ・・・韓国ではこんなものもOKなんだ~と思いました。
テサギのムン・ソリのイメージで見たので、びっくりしました。
by sarahe (2009-03-19 21:47)
「女教授」はチ・ジニとの共演ですね。
わたしも興味がありますが、まだ観てません。
でも、彼女の大胆な演技は以前より知ってますよ。
「浮気な家族」でもスッポンポンでしたから~~(>_<)
とにかく、ムン・ソリとチョン・ドヨンにはプロの女優魂を感じますね。
by collet (2009-03-20 12:12)
映画は音楽やスポーツと違って世界の通し方が違いますもんね。
で、ちなみにここで映画を見るときは、洋画はそのまんま英語で鑑賞。
あ、そんな、英語、理解、できませんよぉ~^。^;
by mee (2009-03-21 00:14)
★meeさんへ
そうそう!映画の場合は、その国の文化が色濃く表れますもんね。
で、わたしもロクに英語の理解力もないくせに、
韓国版の韓国映画は英語字幕で鑑賞してます~(>_<)
あっ、ところでmeeさん、タイ映画の場合はもちろん!?
by collet (2009-03-21 14:10)
ちなみに妥協して観てますが・・・理解力・・・--
聞いてはいけませぬぞいっ^。^;いやだなぁ~もぉ~、、
by mee (2009-03-21 22:25)
いやぁ~、失礼!失礼!!
それには触れずべからずでしたか~~(>_<)
でもね、最近タイ映画も頑張ってるようですね。
わたしはまだ観たことないけど・・・(/_;)
by collet (2009-03-22 12:44)