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映画「ハーモニー~心をつなぐ歌~」 [韓国映画]

昨年よりずっと公開を楽しみにしていました。
そして久々に友人を誘い、二人して大泣きした韓国映画です・・・

ハーモニー ~心をつなぐ歌~
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監督は韓国映画界の重鎮イ・ミョンセ監督の「デュエリスト」や、
昨年日本公開されたユン・ジェギュン監督の「TSUNAMI‐ツナミ‐」など、
話題作の助監督を経て、これが監督デビュー作となりましたカン・テギュ監督です。
最近の韓国映画界では、韓国映画を世界に知らしめた60年代生まれの方に代わり、
70年代生まれの若い監督が多くなっていますが、
このカン・テギュ監督もそんな中のひとりです。

そしてそのカン・テギュ監督が韓国ではここだけというチョンジュ女子刑務所に、
在監者の更生を目的とした合唱団があるということと、
所内で出産した場合には生後18ヶ月まで我が子を育てられるということを知り、
この物語を作ったそうです・・・

映画の冒頭は、思いがけず分娩室での出産シーンから始まりました。
お腹の子供を夫の暴力から守ろうとして、
夫を死なせてしまったジョンへは無事男の子を出産し、
その子ミヌは周りのみんなに愛されながら1歳の誕生日を迎えます。
そんな時、慰問に訪れた女子合唱団の歌声に感動したジョンへは、
自分達も合唱団を結成しようと働きかけ、ミヌとの残された時間と同じ、
半年間で成果を上げることを条件に所長から許可を得るのです。
そして合唱団の指導を元音大教授で夫と浮気相手を殺した罪で無期懲役のムノクに
1度は断られながらも引き受けてもらい、メンバー集めが始まるのでした・・・
生活が苦しくて詐欺を犯した元演歌歌手のファジャ、
力加減を誤ってマネージャーの首の骨を折ってしまった元プロレスラーのヨンシル、
そして義父の性的暴行に抵抗しようとして死なせてしまった元音大生のユミと、
メンバーはみんなそれぞれに暗い過去を持ち、心に傷を抱えていたのです。
でも、歌うことで生きる希望を見出した彼女たちは猛特訓の末、
半年後には合唱団として成功を納めるのでした。
ただその時は、身寄りがないためにミヌを養子にだすことに決めた
ジョンへと可愛いミヌとの別れの時で・・・

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出演は主役のジョンへにキム・ユンジン
日本に韓国映画の面白さを伝えた映画「シュリ」
そこで北の諜報員を演じた時は20代半ばでしたが、
その彼女も12年が経った今では米ドラマ「LOST」でも活躍とのことで、
今や仕事の拠点はアメリカとなり久々の韓国映画出演です。
何でも今回は、あらすじを聞いた時点で出演を決めたそうで、
いつものようなスタイリッシュさは全くなく、
子守唄を歌ってもミヌが泣き出してしまうほどの音痴で、
服役中ながらも明るく健気な母親役を熱演しておりました。

そしてみんなの母親的存在で最後は死刑宣告を受けるムノクには、
わたしにとっては「韓国の母」というとこの方しかいませんね・・・ナ・ムニ
長い芸歴の中でも死刑囚の役なんて初めてじゃないでしょうか?
いつも通りに深い愛情を持ったみんなのオモニを素敵に演じており、
特にラストの処刑場へと廊下を歩くシーンが強く心に残りました・・・

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手には手錠、両腕は監守に支えられ歩きながら、
自分の交差した両手で左右それぞれの監守の手を握り締めるシーンです。
同じ在監者仲間だけに限らず、監守達にまで慕われていたムノクが
見るからに気落ちする彼女達を慰めるように強く握りしめ・・・
「オモニ・・・」と泣きながら見送る仲間たちと同じように、堪らずわたしも涙しました。

とにかくこの映画、久しぶりにハンカチ片手にウルウル状態だったのですが、
その取っ掛かりはどこからかと言いますと・・・
「TSUNAMI-ツナミ‐」にも我が儘な女子大生役で出演していましたね。
カン・イェウォン演じるユミがムノクの母のような愛情に触れ、
それまでは頑なに他人を寄せ付けなかったのが
綺麗な透き通る声で「ダニー・ボーイ」を歌うシーンからでした。

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カン・イェウォンは実際にも音大の声楽科出身だそうで、
まさしくユミその物の寂しげに語りかけるような歌声と物悲しい旋律についほろりときて~[たらーっ(汗)]
バッグの中へ手を突っ込んでハンカチを取り出したのでした。
そしてラストにかけてはもういけません~[ふらふら]
真っ暗で隣からも、またあちらこちらからも鼻をすする音が聞こえ、
もう我慢することもないだろうと、涙涙の時を過ごしたのでした~[もうやだ~(悲しい顔)]

あっ、それと出演者といえば忘れちゃいけない!
1歳のミヌを演じた?イ・テギョンくん、
何とも可愛く愛らしく、天衣無縫の役者っぷりで顔を見てるだけで幸せになれそう~[揺れるハート]
でも、きっと現場は大変だったんでしょうね!?
笑わせたり泣かせたりと~~[あせあせ(飛び散る汗)]

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そんなこんなで観終えて、友人とお互いの目が真っ赤なのを確かめ合いながら、
「泣くかな?とは思ってたけど、こんなに泣けるとは思わなかった~[あせあせ(飛び散る汗)]」なんて言いながら、
音楽をテーマにして、人の心を変えるという物語は今までも沢山あったけど、
女子刑務所と子供の組み合わせは珍しく、面白い着眼だな~と思ったのでした。

この映画、ただ今公開中のところもあと2週間ほどで終了だと思いますが、
久しぶりに気持ちの良い涙を流したい方には、大いにオススメですよ~~[るんるん]

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映画「美人図」 [韓国映画]

9月末より東京・大阪のシネマート系列で公開が始まりました。
2008年本国での公開時には230万人を動員したという韓国映画です。

美人図
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NHKBSでただ今放送されている「イ・サン」をご覧の方も多いかと思いますが、
この映画は、そのイ・サンこと18世紀末の朝鮮王朝第22代王である正祖(チョンジョ)の下、
朝鮮ルネッサンスと言われるほどに朝鮮文化が花開いた時代のお話です。
ドラマでも宮廷の図画署(トファソ)が登場していますが、
そんな時代に実在したシン・ユンボクという天才絵師が主人公です。
ただ、朝鮮初のエロチシズムを描いたといわれる代表作「美人図」をはじめ、
数々の名画が残されているものの、
シン・ユンボクという人物については謎に包まれており、何も分からないそうで、
同じくシン・ユンボクを描き、日本でも人気だったドラマ「風の絵師」同様に、
この映画でもシン・ユンボクが女性だったという仮説をもとに作られています。

監督はチョン・ユンス、これが監督4作目ですね。
わたしはデビュー作以外の、日本でも映画化された小説
「世界の中心で、愛をさけぶ」のリメイク版「僕の、世界の中心は、君だ」と、
その次の、本国では300万人もの観客動員数を誇った「食客」を観ましたが、
3作とも、これが同じ監督の作品かと思えるほどに、
全く趣の違う作品で不況といわれる韓国映画界の中で、
リメイク版ばかりというのは気になりますが、 チョン・ユンス監督の好調ぶりが伺えますね。

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物語は、代々続いた宮廷絵師の家に天賦の才を持ち生まれたものの女であるがために、
才能の無い兄の後ろに隠れ、代わりに絵を描いていたのが父に露見し、
兄が自殺してしまうところから始まります。
後継ぎを失くした父は7歳の娘に女人禁制の宮廷に入るため、
これからは男として生きることを命じ「師匠は所詮、弟子に殺されるものだ」と言って、
当代きっての絵師キム・ホンドのもとへ送り出すのです。
そして、そんな父の思いを知ってか知らずか師匠のホンドはユンボクの才能を見出し、
愛弟子となったユンボクは、絵師としてどんどん開花してゆくのですが・・・
ある時、「百姓の生活ぶりを知りたい」と王が所望した俗画を描くため
市井に赴いたユンボクは、そこで初めて人間の生と愛を目にして、
素直な心で自分が見た通りのありのままを描くのですが、それは淫らで低俗だと罵られ・・・
そんな時、ひょんなことから鏡職人のガンムと出会い、自分が女であることを知られ、
いつしかガンムと愛し合うようになり、女として初めて知ったその恋を貫こうとするのですが、
ガンムとの逢瀬を目撃した師匠のキム・ホンドも絵だけではなく、
ユンボクの全てを愛してしまい・・・

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主役のシン・ユンボクを演じるのはこの当時はキム・ミンソンですが、
2009年に改名したそうで、今はキム・ギュリというそうな・・・
わたしは「下流人生」でのヤクザの妻となるお嬢さん役が印象に残っていますが、
そんな清楚なお嬢さん役から一変して、この映画では全裸シーンも多く、
体当たりで演じた濡れ場が大いに話題となったようです。
ただ、彼女としては女優人生をかけ一大転機となった作品でしょうが、
その割にはその後の作品に恵まれてないように思え、ちょっぴり気の毒に思います。
でもね~サスガにモデル出身だけあり、均整のとれたヌードは見事でした~[ぴかぴか(新しい)]

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そして彼女と愛し合うガンムにキム・ナムギル
この彼も同性愛を描いた話題作「後悔なんてしない」まではイ・ハンという芸名でしたが、
その後、ソル・ギョング共演の「カン・チョルジュン 公共の敵 1-1」から
本名のキム・ナムギルに改名したそうです。
そしてパク・ヘイル共演の「モダンボーイ」では日本人役で出演しており、
役柄もですが彼自身も印象深く演じ、わたしも心に残っていました。
でもって、わたしは見てないのですがこの美人図の後に出演した
ドラマ「善徳女王」で大ブレイクしたとか!?
ただ今、兵役中とのことですが、NHKではこれから彼のドラマが放送予定だということですし、
除隊を待ち望んでらっしゃるファンも多いことでしょうね。

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そしてキム・ホンドを演じるのはキム・ヨンホ
王の信頼も厚く愛弟子ユンボクの絵に魅了され、ユンボクの素性を知ってからは愛へと変わり、
その愛が自分へと向けられないことを知ると嫉妬に変わるという、
苦悩に満ちた難しい役柄を品を残しながら上手く演じていると思いました。
思い起こせば、初めてこの彼を知ったのは30代半ばで出演した「SSU」でしたが、
海軍将校の白い軍服が凛々しく似合っていた彼もすでに40歳を越し、
こんな中年役を演じるようになったんですね・・・
また、この他にもチュ・ジャヒョン演じる妓生ソルファが登場し、
ホンドを愛するが故に傷つき嫉妬にかられ、韓国映画やドラマではお馴染みですが、
これでもか!と、話をややこしくする四角関係となります。

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この映画、歴史官能文芸絵巻と紹介され、
117分の上映時間で20分程が濡れ場だそうで、そちらばかりが話題となりそうですが、
ユンボクとガンムの2人のシーンは、羽毛や美しい絹の反物を使い、
とてもソフトで綺麗な映像となっていました。
また、ナンと言っても劇中登場する柔らかな筆運びの絵が素晴らしい!
この映画のために、国宝であるユンボクの「美人図」をはじめ、
画帖「恵園伝神帖」の中の「端午風情」や「月下情人」など、
人間国宝の画家の手により再現されたそうです。
そういう訳で、ご覧になる方はそちらもお楽しみになれればいいですね。

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映画「TSUNAMI-ツナミ-」 [韓国映画]

最近にしては珍しく、今週末から全国ロードショーされる韓国映画です。

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昨年7月に本国で公開され、このところ不況続きの韓国映画界にあって、
歴代4位という素晴らしい興行成績を残し、この度日本上陸となりました。
今回の日本公開については全国ロードショーということはもとより、日本語吹き替えもあり、
またそのアフレコを前宣伝を兼ね、日産スタジアムで18,152人を集め、
「史上最多人数が同時に参加したアフレコ収録」としてギネスに申請とかなんとかで~[わーい(嬉しい顔)]
さぞかし、大金をお使いだったのでしょうか?
TVのスポットCMもあるようだし、配給会社も相当力をいれてるようです。

監督は脚本も自ら手掛けたユン・ジェギュン監督です。
監督デビューは2001年の「マイ・ボス マイ・ヒーロー」ですが、
脚本家としては、それ以前から活躍されてたようですね。
ただ、わたしも何作か見ていますがあまり記憶には残っておらず、
この映画にも出演していますハ・ジウォンが女性ボクサーを演じた、
前作の「1番街の奇跡」がちょっと話題になった程度でしょうか?
ですからユン・ジェギュン監督にとっては、
5作目となったこの作品が映画祭での受賞もあり出世作となったようです。

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原題を「海雲台(ヘウンデ)」といい、
舞台は来月開催されます釜山国際映画祭のメイン会場でもあり、
いまや釜山の一大観光リゾート地であるヘウンデビーチです。
そのヘウンデビーチに高さ100m、時速800kmの「メガツナミ」といわれる、
巨大津波が押し寄せるという、韓国発のパニック・ムービーです。
そんなわけで、迫力ある津波のCGは「デイ・アフター・トゥモロー」や
「パーフェクトストーム」を手掛けたアメリカ人スタッフも参加したそうです。
ただ、CGはハリウッド的だけど・・・
韓国映画らしく登場人物達の人間ドラマもシッカリと描かれています。

映画は2004年東南アジアの各地に未曾有の大被害を起こした、
インドネシア・スマトラ沖で発生した大地震から始まります。
その時、ヘウンデから遠洋漁船に乗りインド洋海上にいたマンシクは津波に巻き込まれ、
同船していた、密かに愛するヨニの父親を亡くしていたのです。
それで5年経った今でも、ヨニに愛を伝えられずにいたのですが、
ヨニも自分を愛していることを知り、ようやくプロポーズをするのでした。
一方、国際海洋研究所のキム博士は昨今の対馬近海の異常に気付き、
一人、ヘウンデにも大津波が発生する恐れがあると主張するのですが、
災難防災庁さえも日本人は騒ぎ過ぎで、韓半島を襲う確率はないと断言し、
予定通りに博士の別れた妻が携わる国際文化エキスポも開催されるのでした。
でも、その時は確かにやってきて・・・

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出演は主役のマンシクにソル・ギョング
いつもはその役柄によって、完全に化ける彼ですが、
今回は実年齢より少し若い役柄だったようで、ちょっと無理があるように思え、
この役は別に彼じゃなくてもいいんじゃない~どうして引き受けたのかしら?と、
わたしはずっと違和感を感じながら観ていました。
もしかして、昨年ソン・ユナとようやく結ばれたものの、
まだ前妻への支払いが済んでないのかもね~[ふらふら]

そしてヨニには、ユン・ジェギュン作品にはお馴染のハ・ジウォン
どうやら監督は、2作目の「セックス・イズ・ゼロ」からのお気に入りのようですね。
ドラマでも気が強く、腕っぷしの強い女の子を演じることが多いジウォンちゃんですが、
こちらでも父亡き後、一人で強くたくましく生きるヨニを好演しています。

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また、映画の中では一人娘を間に彼らのドラマも描かれますが、
地質学者のキム博士を演じるのはパク・チュンフンで、別れた妻にオム・ジョンファ
そしてその他にも、救助隊員をしているマンシクの弟をイ・ミンギが演じ、
救助して知り合った、ソウルの我まま娘に翻弄されながらも、
最後は純粋に自分の仕事を全うするこの彼がチョッコシ泣かせてくれました[もうやだ~(悲しい顔)]

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本国での人気ぶりからも、日本での今年1番の話題作といえる韓国映画だと思いますが、
正直言って、わたしは物足りなさを感じました。
というのも、確かにCGは迫力満点ではあるけれど、
津波が押し寄せてからの展開にこれはお笑いか?と思えるような信憑性のない演出があり、
それまでの緊迫した緊張感も何処へやら~どうにも後味が良くなかったのです。
これは、最近の韓国映画によくあることですが、国民性の違いでしょうか?
わたしは中途半端に感じてしまい、決して好きではありません。
なので、2006年に鳴り物入りで日本公開された
「グエムル 漢江の怪物」の二の舞では?な~んて、勝手に一人思っているのですが・・・

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映画「クロッシング」をみて(ネタばれあり) [韓国映画]

この映画、内容の重さや辛さから観に行く前の日まで躊躇していました。
でも、2作目の「ファースト・キス」でのアン・ジェウク主演に始まり、
チャン・ヒョクの「火山高」
チョ・ハンソンとカン・ドンウォンの「オオカミの誘惑」
そしてヒョンビンの「百万長者の初恋」と、
今までは、韓流の王道をいくような若手人気俳優を起用した作品が多かった
キム・テギュン監督の、初の社会派ドラマということへの興味が勝り、
やはり観に出掛けることになりました。

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この映画は、2002年にあった北京のスペイン大使館に25名もの脱北者が駆け込み、
韓国への亡命に成功したという実話をモチーフに製作されました。
わたしも記憶の片隅に、瀋陽にある日本領事館に脱北者の家族が駆け込もうとし、
中国の警官によって取り押さえられる映像をニュースで見ましたが、
あれもその2002年の出来ごとだったのですね・・・
そんな脱北者100人以上に取材し、4年の月日をかけて、
時の大統領が脱北者に冷たいノ・ムヒョンだったため、秘密裏に撮影され、
今のイ・ミョンバク大統領に政権交代した2008年6月、晴れて韓国で公開されたそうです。

映画は、北朝鮮の炭鉱の町、咸鏡南道に暮らしていた父と子の物語です。
ところでこの映画は今年の春から各地で上映されていますが、
まだご存じでない方も多いと思います。
それで少しでも興味を抱いていただければな~と思い、
ネタばれありで、ストーリーを思い出せる範囲で書き記しますね。
なので、これからご覧の予定がおありの方はスルーをお願いします。
なお、今後の上映館案内はこちらのHPをご覧くださいね。
http://crossing-m.jugem.jp/?cid=2

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父のヨンスは、元サッカー選手で今は炭鉱夫として働き、
妻と11歳になる息子ジュニの3人で、貧しいながらも幸せに暮らしていました。
それがある日、妻が栄養失調から肺結核に倒れ、
妊娠してるがゆえの特別な薬を手に入れるため、最後の手段として、
中国へ行きお金を貯め薬を買って帰ってくると言うのです。
そして旅立ちの日、ジュニと最後にサッカーをしお母さんを頼むと言い置き、
危険を顧みず国境越えをするのでした。

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死に物狂いで国境を越え、延辺朝鮮族自治州の伐採場で働きお金を貯めるのですが、
ある日突然、取り締まりにやって来た公安から逃げようとして、お金を失くしてしまうのです。
でも、スッカラカンになりはしたものの公安から無事に逃げられたヨンスは、
ある中国人ブローカーの簡単なインタビューさえ受ければお金が貰えるという話に応じ、
瀋陽にあるドイツ領事館に30人ほどの仲間たちと逃げ込むのでした。
ただ、それが韓国の脱北支援団体が行う韓国亡命の手助けとは知らずに・・・

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かたや、留守中にとヨンスが用意して出掛けた食料も尽き、
病状も悪化した妻は、ついにジュニに結婚指輪を託して息を引き取ってしまいます。
一人ぼっちになってしまったジュニ・・・
父との再会を信じて、幼い彼もまた国境を越えようとするのですが、
無残にも捕まり強制収容所に入れられてしまうのです・・・

そんな時、韓国で仕事を得たものの自分ではどうする事も出来ず、
自暴自棄になりかけたヨンスですが、仲間の「ブローカーが見付かった」
とのひと言に希望を託し、妻と息子の消息を調べてもらい、
妻の死に嘆きながらも強制収容所からジュニを救い出すのに成功します。
そして、ブローカーの携帯電話で久しぶりに父子の会話が実現するのですが、
ジュニは父に「お父さん、約束を守れずにごめんなさい」と泣きながら繰り返すだけでした。
かくして父の声を聞き、父との再会を確信したジュニの険しくて長い旅が始まり・・・
延辺から北京、そして内モンゴル自治州まではブローカーと同行者がいたものの、
中国とモンゴルの国境の有刺鉄線を超えられたのはジュニ一人だけとなり、
「わたしを韓国領事館に連れて行って下さい」と書かれた札を首からぶら下げ、
食べる物も何もなく、来る日も来る日もモンゴル砂漠の中を歩きつづけ、
父がすぐそばまで迎えに来ていることも知らず、
満天の星の下、やがて力尽きたジュニは母の指輪を細い指にさし眠るように・・・

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4年の映画製作の大半は、脱北者達へのインタビューに費やされたそうで、
製作スタッフにも脱北者が3人、俳優には6人、そしてその他にも参加しており、
映画の中にある、一瞬、目を覆いたくなるようなシーンも実際にあったということです。
また、脱北経路も忠実に再現しようと非公開で中国やモンゴルで撮影したそうで、
いつもなら美しい自然の映像に感嘆するわたしですが、
どうにも心底から、それらを楽しむ気にはなれませんでした・・・

そんな映画の出演は、父のヨンスをTVドラマでは大スターですが、
映画では残念ながら今まで代表作がなかったチャ・インピョ
ドラマをあまり見ないもので、わたしは初めてのお顔でしたが、
自分の子供とジュニが同い年の設定だったそうで、
感情移入もしやすかったとの言葉通り、愛情溢れる父役を熱演していました。

そして息子のジュニを演じたのはシン・ミョンチョルくん、
ソウル育ちの子役が多い中、彼は田舎育ちだそうで、
5ヶ月に及ぶオーディションの末、この役を射止めたそうです。
どことなく、父親役のチャ・インピョに似て、上手い配役だと思いましたが、
とにもかくにも、彼の携帯越しの「ごめんなさい」に泣かされたわたしです[もうやだ~(悲しい顔)]

じつはこの映画、「おくりびと」の受賞で日本中が湧いた、
2008年の第81回アカデミー賞外国語映画賞の韓国出品作でもありました。
正直言って、この映画が受賞してもおかしくないように思えましたが、
「おくりびと」にもそれに値する何かがあったのは確かです。
そしてたとえ受賞せずとも、チャ・インピョ同様に、
キム・テギュン監督にとっても間違いなく、この映画が代表作となったでしょう[ぴかぴか(新しい)]

あ~それにしても、帰り道、
嫌でもあの最高指導者の顔が浮かび・・・
ナンとかならんものかと心の中で苛立ちを感じずにはおれなかったんだけど~[ちっ(怒った顔)]

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映画「霜花店」をみて思ったこと・・・ [韓国映画]

韓流シネマ・フェスティバルでも上映されましたが、
大阪では来月6日からシネマート心斎橋にてロードショーが始まります。
何でも本国では大人気で「王の男」に次ぎ、韓国時代劇歴代興行成績第2位とか[ぴかぴか(新しい)]

霜花店(サンファジョム)ー運命、その愛

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監督はクォン・サンウの出世作「マルチュク青春通り」や、
同じくチョ・インソンもこちらが出世作ですね「卑劣な街」を制作したユ・ハ監督です。
このユ・ハ監督、少し変わった経歴の持ち主で、
詩人でもあり、文筆業と映画製作を両立させるというマルチぶり!
それで1993年の監督デビュー作もご自身の詩集の映画化だったそうな~[ぴかぴか(新しい)]
ただ映画監督として世に認められるようになったのはその数年後、
わたしもこれでお名前を知ることとなった2004年の「マルチュク青春通り」でしょうか?

さて、この映画は高麗末期の王朝が舞台です。
当時の高麗は大国元の勢力下におかれ、時の王、恭愍王の妃も元から降嫁した王女でした。
ところが、王は女性とは交えられない体で王妃との間には子が出来ずにいたのです。
そんな時、元からは世継ぎがないなら元の皇子をと政治的な圧力を掛けられます。
そこで王は国家存亡のため、子供の頃からずっと傍らにおき、
寵愛してきた護衛隊の隊長であるホンリムに命じるのです。
自分の代わりに王妃との間に子を宿すことを・・・
王の命令は絶対でありながらも、それまでは同性である王の愛しか知らないホンリム、
最初は茫然自失となりますが、仕方なく初めて王妃と交わった夜、
今までとは違う愛に気付き、また王妃もそんなホンリムを愛するようになるのです。
そして王妃は、故郷では好きな男に食べてもらうという霜花餅をホンリムのために作り、
そんな二人に嫉妬した王は・・・

出演は「卑劣な街」につづきチョ・インソンが主役のホンリムを演じています。
どうやら監督はインソン君がお気に入りのようですね。
前回はアクション映画だったので、今回はメロー映画にしようと彼と話したとか!?
それにしても、インソンくんにとっては難しい役所でしたね。
子供の頃から一途に、相手は王一人と信じて疑わなかったのが、
王妃との交わりで思いがけず本来の自分に気付いてしまい、
王への罪の意識に苛まれながらも王妃を愛すという複雑な役所で、
全裸での演技や勿論、役柄を演じるにしても大変だったと思います。
でも、彼の情熱と犠牲がなければこの映画はできなかっただろうとの監督の言葉通り、
確かにホンリムの繊細な心の動きやファンなら直視できないかも?の、
やたら長く感じた[あせあせ(飛び散る汗)]大胆なベッドシーンを思い切って演じていたと思います。

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そしてこちらもインソン君同様に今までにない役柄で、恭愍王を演じたのはチュ・ジンモです。
この役は、彼にとっても新しいことへのチャレンジでしょうか?
これまでの彼からは想像できないような役柄ですが、難役を演じ切り、
昨年の百想芸術大賞 映画部門 最優秀演技賞を受賞したそうです。
中でも印象に残ったのが、優雅に宮廷楽器の琴を奏でるシーンです。
2ヶ月ほど練習して、実際に彼が演奏してるとか~[るんるん]
ただね、ココだけの話・・・
「レッド・クリフ」でのトニー・レオンや金城君ほどには優雅さは感じなかったけど~~[失恋]
それにわたしの心の片隅では、どうも王さまの品格に乏しく、またアクティブ過ぎに思え、
この役は、べつに彼じゃなくても良かったのでは?と、少々異和感があったのですが・・・

それに、インソン君がこの映画が成功したならば、彼女の功績が大きいと話したという。
大物男優二人に話題が集中し、お気の毒です~[ふらふら]
王一人を頼りに元から嫁いだものの、すでに王の心にはホンリムしかなく・・・
でも自分はもう高麗の人間だと国のためにホンリムを受け入れ、
その初めての男である彼を愛してしまう薄幸の王妃を演じたソン・ジヒョ
彼女についてはどちらも、日本でも人気のあるドラマでご存じの方も多いでしょうが、
夫人役を演じた「朱蒙」を観てないわたしは、
「宮」でのバレリーナを夢見る可憐な姿しか覚えがなく・・・
そんな彼女がR-18指定のこの映画では、インソン君の言葉通り、
王妃としての風格を持ちつつ一人の男にのめり込むという体当たりの演技で、
久々に見た彼女が大人の女優として、ワンランク上を目指しているのがよく分かりました。
ただ昔と違い、最近の韓国映画では若手女優のヌードやセックスシーンなど珍しくはなく、
そんな役を演じた女優のその後には少なからず疑問が残るように思えて・・・
ですからその意味でも、これからの彼女に注目ですね。

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ところで、「マルチュク青春通り」にも登場しましたが、
少年時代にユ・ハ監督はブルース・リーにハマっていたそうで、武侠物がお好きなようですね。
そのせいか?中国映画も好きなわたしは所々、中国武侠映画を思い出すシーンがあり、
アクションシーンでのブシューと飛び出る血ノリの量など、
中国映画までとはいかずとも、韓国映画にしてはヤケに多いように思いました。

そして最後に、この映画の中で恭愍王が倭国の刺客に襲われるシーンがあり、
歴史好きなわたしはふと気になって調べたところ、
この時代の日本はちょうど南北朝時代で、南朝だの北朝だのとややこしい時代でした。
で思いだしたのが社会科の授業で習った海賊の倭寇です。
あれはきっと、倭寇の仕業かしら~?なんて、映画には全く関係ないことに思いを馳せながら、
ナント!実在した恭愍王も傍近くに仕える宦官の手によって暗殺されたと知り、
ああ~[ひらめき]なるほどね~!それでユ・ハ監督、
映画のラストはああやって辻褄を合せたのね~と、1人納得したのでした~[手(チョキ)][わーい(嬉しい顔)]

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